九章 緊急招集、黒大鹿討伐

13/15
48769人が本棚に入れています
本棚に追加
/1502ページ
  「……すまぬ、話を戻そう」  リューティスが冷静に言い返したことで我に返ったのか、わざとらしく小さく咳払いしたキオレは長い脚を組んで、膝に手を添えた。 「人間に受け入れられぬのなら、仕方がない。リーダーはミーシャに任せる。ただし、リューティスに補佐を命ずる」  ようやく諦めてくれたらしいキオレに、リューティスは安堵した。だが、ライアンは納得しなかった。 「何でコイツが補佐なんだよ! 第一、リーダーだって、俺の方が上手くできる」  ──その傲りが、怖いというのに。 「──甘いですね」  思わず口をついて出た言葉。戦場で生きていたリューティスにとって、ライアンの考えは、──反吐がでそうなほど甘い。 「っ何だって!?」  血相を変えたライアンの血走った目が、妙に目につく。──彼の様子が、おかしい気がした。  思わずキオレを一瞥する。小さく頷いた彼女に、リューティスは察した。 「甘いですよ、貴方は。中級魔法程度では、相手が防御に特化していたら下級魔物でも傷さえつけられない」  それで傲ることのできる彼が、羨ましくすら感じる。 「──馬鹿にしやがって!」  立ち上がったライアンが、リューティスに手を伸ばしてくる。その手が胸元を掴む前に立ち上がって身体強化をし、彼の手が触れる前に、彼が反応できない速度で手刀をその首に落とす。 .
/1502ページ

最初のコメントを投稿しよう!