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「……ライアンが反応できない速さで動くか」
ソファーから崩れ落ちたライアンを眺めていると、キオレの呟きが聞こえた。おもむろに彼女を見ると、呆れたような目が自分に向けられていた。
「補助魔法は得意ですから」
「それにしてもその速さは異常じゃろう」
しない方がよかった、と思わないこともない。ミーシャが唖然呆然としている姿が、視界の端に映っている。しかし、ライアンを気絶させるのに一番楽な方法がこれだったのだ。
転移魔法を詠唱破棄して、彼の背後に回って気絶させるという方法もあったが、転移魔法を詠唱破棄するのは彼が反応できない速度で動くよりも遥かに難しい。
「お主、本当にAランクかの?」
「ギルドカードをお見せしましょうか?」
リューティスのランクはAである。──他の名前で、Aより遥かに上のランクを持ってはいるが。
「よい。すでに確認済みじゃ」
溜息混じりの言葉に、リューティスは苦笑した。
「それで、ライアン・リーは薬の乱用でもなさっていたのですか?」
近年、中央の国で広がりつつある薬物。脳の神経に作用し、幸福感や快楽を感じさせてくれる悪魔は、北の国から密輸されていることが、わかっている。
リューティスの友人の血縁者にも、薬物で身を滅ぼした者がいる。
依頼を受けている時に、何度か薬物で人生を狂わせた者と会った。
薬物で狂ってしまった者が、家族を惨殺した場に行った時の記憶は、強く脳に刻み込まれ、薄れることはない。
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