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「……見たことがあったのか」
「ありますよ、それなりには。この仕事についているのです、当然でしょう」
──冒険者と黒紫騎士。両者とも、社会の裏側に関わりがある者と接する機会の多い職である。
リューティスが黒紫騎士であることも知っているキオレは、「そうじゃな」と一言零した。
「なぜ今まで放置を?」
「確かな証拠がなくてのぅ。ライアンが薬物しきものを服用している姿を目撃したという者はいるんじゃが、Aランクともなるとそれだけで捕まえるわけにはいかん」
Aともなれば、それなりの名声がある。疑わしいからという理由だけで罰せば、ギルドが非難を受け、下手をするとこのギルド──“虎猫の宴”のような小規模ギルドは潰れる。
それにこの街には、キオレ以外に、AAランク以上のランクの持ち主がいないのだ。捕まえるのも大変だろう。
「今回のことで、Aランクでは不適と判断して、Cに落とさせるつもりじゃよ」
不適と判断できる明確な理由ができたのだ。その対応は当然であろう。
──呆然としたままのミーシャを置いて、話は進んでいく。
薬物に落ちたライアンはあてにならない。足手まといにすらなるだろう。黒大鹿討伐の指揮をとるのはミーシャとリューティスの二人となり、結局、名目上の討伐隊隊長はミーシャとなった。
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