48747人が本棚に入れています
本棚に追加
/1502ページ
剣、槍、弓、鎌、棍、鉈。
魔導書、杖、魔方陣札。
様々な武器を携えた冒険者で、ギルド“虎猫の宴”の建物は、満員であった。外に溢れ出ている冒険者もいるのだろう。
騒がしいが、ぴりぴりとした緊張感が漂っており、その顔は皆一様に険しい。
受付の奥の部屋の扉をわずかに開けたリューティスは、静かにその様子を観察していた。
「お主、準備は良いのか?」
背後からかけられた滑らかな声に、振り返る。
「えぇ、食料と薬は補填しておきましたから」
リューティスの“ボックス”の中は、いつどこへ行っても困らないくらい、様々なものが大量に入っている。
食料も薬も新たに揃える必要はなかったが、形だけでもと買い込んでおいた。
今日は腰に純白の刀も携えている。外へ出しておかずとも、魔武器のそれは名を呼べば簡単に喚び出せるのだが、見た目だけはそれらしくしておこうと腰にさげたのである。
キオレはソファーに座ったまま、テーブルの紅茶を手にとった。音を立てることなく、静かに飲む。
「その刀、魔武器かの?」
「えぇ」
真っ白な柄を、一撫でする。その尻から垂れる飾紐が、ふわりと揺れた。
「……綺麗じゃの」
「ありがとうございます」
汚れを知らぬ純白の刀。【白龍】という名のそれは、どこまでも美しい。
.
最初のコメントを投稿しよう!