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芸術作品のようなそれであるが、紛れもなく飾り物ではない武器。魔鉱石という石に魔力を流すことで作り上げた魔武器である【白龍】は、リューティス自身が持つ魔力の属性や特性を受け継いでいる。
【白龍】の属性は、氷。何にも染まらぬ白は、リューティスの氷属性が目に見える形で表に現れた結果であろう。
「打ち合わせはせぬのか」
「作戦はミーシャさんに任せました。僕より遥かに経験が豊富でしょうから」
黒大鹿を一人で倒したことならば、何度もある。リューティスが長をつとめていた隊の者たちを引き連れて、魔物の大群を壊滅させたこともある。
だが、今回、リューティスが引き連れるのは、彼らよりも数段も弱い者たちである。彼らと同じことができるわけがない。
「任せたぞ、リューティス。何かあったら頼むの」
キオレは薄い唇でにやりと笑む。その表情にリューティスは、彼女はリューティス一人で黒大鹿を倒せることに気がついているのだと、悟った。
ライアンを一撃で鎮めたのが原因だろうか。
ならば、なぜリューティス一人に討伐を命じないのかと、訝しむ気持ちで彼女に目を遣れば、彼女は表情を変えることなく答えた。
「最近の奴等は、平和ボケしておってのぅ」
──いつか死に至るほどの大怪我を負う前に、気を引き締めさせたかった、ということだろう。
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