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「戦争も終わりましたし、仕方がないことかもしれませんね」
長年の確執が、一度強くぶつかりあったことで、消え去ったのだ。戦が終わった後の穏やかな日々に、気を緩める者は少なくない。
「魔人、か……。若い頃は何度か戦ったことがあったが、今は籠の鳥じゃからな」
見た目が若いキオレの口から出るとおかしな台詞に聞こえてしまう。
街から滅多に出られないギルドマスターは、まさに籠の鳥。ギルドマスターが街の外へ出なければならないときは、同等の実力の持ち主をギルドの本部に残していかなければならない。
これがリューティスが所属している“月の光”のような大規模ギルドであったなら、こうもこの街に縛り付けられはしなかっただろう。
大規模ギルドには、ギルドマスター以上の実力者が、ほぼ常に滞在している。
「和解はしましたが、残党はいますし、気を抜ける状況ではありません」
「……平和が一番のなんじゃがのぅ」
本当に平和なら、それでいい。緩んだ気持ちで討伐依頼を受けても、笑ってすむ程度の怪我しかしないならば、それでいいのだ。
しかし、現実は違う。
「馬鹿な理由で死ぬ者が、減って欲しいものじゃな」
冒険者というのは、何が起こるかわからない仕事である。
気を緩めてはならないのだ。常に辺りに気を配って、警戒を怠ってはならないのだ。
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