十一章 黒大鹿と冒険者

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  「一人で抜け出してきたのかい?」 「はい。特に会いたい者はいませんから」  リューティスの返答に複雑そうな表情をした女性に、首を傾げる。それと同時に不意に思い出したのは、報告が済んでいないということであった。 「ギルド“虎猫の宴”のマスターに会えますか? 報告を済ませたいのですが」 「あぁ、いるよ。ちょっと待ってな」  ようやくリューティスの腕を離し、女性は受付へと戻っていく。そのまま奥の扉を開けて入っていった。  僅かばかりの冒険者が、昼食をとっている。討伐に参加しなかった下位ランクの者たちだろう。彼らは緊急招集時に参加せずとも、特に強く何かを言われたりしない。  リューティスとそう歳が変わらないだろう少年が、一人依頼掲示板の前に立っていた。  何の気なしにその隣に立ち、依頼掲示板を眺める。 「……君、冒険者?」  声をかけられてとなりを見れば、少年がこちらを見ていた。鼻の周りのそばかすと勝気そうな橙の目が、少年に活発そうな印象を与えていた。 「えぇ」  学園には通っていないのだろうか。旅をして暮らす若者は、少なくない。それなりに知識があって、それなりに収入があれば、本来は義務教育である学園や学校に通う必要はない。 .
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