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「……よかった。俺くらいの歳の冒険者、このあたりにいなくてさ。話相手になってくれないか?」
安堵したように表情を緩めた少年の、言葉と同時に差し出された手。背負っている剣はまだ新しく、その手の平はまださほど豆ができていない。
「こちらこそ、宜しくお願いいたします」
差し出された手を握った。まだまだ柔らかさを残すそれが、岩肌のようになるまでには、あと数年かかるだろう。
少年はリューティスの手を握り返して、嬉しそうに笑った。
「俺、フィーラルド・カイラ、ランクはCで歳は十五。フィーって呼んでくれ」
──Cランク。しかし、ここにいるということは、彼は討伐隊に参加していなかったのか。
辞退したのか、討伐隊が出てからこの街に来たのか。何となくであるが、後者な気がする。
「リューティス・イヴァンスです。ランクは──」
そこまで言いかけて、背後から名を呼ばれた。振り返れば、受付の女性が手招きをしている。
「すみません、呼ばれてしまいました」
「何かやらかしたのか、……えぇと、リューティス?」
呼び方はこれでいいのか、ということだろうか。
「リュースとお呼びください。十分もすれば戻ってきますが……」
「わかった。待ってるな、リュース」
久々に愛称で呼ばれ、くすぐったい気持ちにリューティスは小さく笑んだ。
──受付の後ろの扉から、部屋へ入った。三度目になるこの部屋だが、改めてゆっくり見てみると、なかなか高価そうな物が置かれている。
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