十一章 黒大鹿と冒険者

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  「フィーは今依頼を受けていますか?」 「うーんと、薬草採取依頼を。リュースは?」 「……雑用の依頼を。あと四日と半日です。それが終わり次第、次の街に行くつもりです」  依頼が終わらなければ、この街から旅立てない。 「次の街? どこにいくつもり?」 「ラジュワ、ですね」  この街からさらに西へ行ったところにある、小さな街である。『本の街』などという魅惑的な呼び名を持つ街であり、読書好きのリューティスにとって、一度は行ってみたい街の一つであった。 「ラジュワか……。ついて行ってもいいか?」  彼が一緒であっても、何ら問題はない。多少動きづらくなるだろうが、一人旅というものはたまに寂しくなるものである。  折角できた話相手と早々にわかれたくもない。フィーがついてくるというなら、共に旅をするのも悪くないだろう。 「えぇ、勿論です」  リューティスが頷けば、彼は嬉しげに笑った。料理が運ばれてきたために、会話はそこで途切れた。  宿の場所を教えあってから、フィーとギルドでわかれた。無事に帰還したことを伝えるためにも、あの工房に行かなければならない。  工房の扉を叩くと、気だるげな表情をした髭面の男が出てきて、リューティスを見ると目を見開いた。 「……早かったな」 「向こうから襲いかかってきてくれましたから、近づく手間が省けまして」 .
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