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適当に理由を口にすると、男は呆れたように笑って工房の中に入れてくれた。暫く廊下を歩いたところにある作業場について、リューティスは顔をしかめた。
せっかく片付けたはずの部屋が、また散らかっているのだ。埃が積もっていない分だけ、最初よりは綺麗だ。しかし、なぜリューティスが一日いないだけで、こうも汚くなるのか。
半眼を向ければ、男はそっぽを向いて頭をかいた。
「……片付けは、弟子に任せてた」
──貴方だって、弟子だった頃はあるでしょう。
リューティスは言いかけた言葉を、無理矢理呑み込む。一応は雇い主だ。この台詞は流石に口にできない。
呑み込みきれなかった溜息を吐き出して、リューティスは本の小山を解体しにかかった。
片付けが終われば作業に入るだろうと思っていたが、男の昼飯がまだだったらしい。
情けない音を鳴らした男の腹に、本人は目をそらした。
──仕方がない。
リューティスは簡単なものなら、と前置きをしてから、キッチンに向かう。キッチンの方はどうかと思いきや、意外と汚れていない。外食で済ませていたのだろうか。
相変わらず冷蔵庫の中は見ない方が良い状態だろうと、リューティスは“ボックス”の中から材料を取り出していく。
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