閑話 その手紙は その一

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  「こちらは陛下からの書類です」  机の上の紙束の上に重ねるように置かれたそれを見て、また溜息を吐き出す。──学園に通ってた頃が懐かしい。別の仕事で書類処理をしなければならないことは多々あったが、ここまで積み上げられたことはない。 「……ご苦労」 「いえ。ガイア殿下は……お疲れのようですね」  当たり前だ。最近睡眠時間が削られて、平均四時間睡眠である。体力に自信のあったガイアでも、一日中書類の処理をして四時間睡眠では、流石に寝不足だ。  ガイアは銀髪の美人な親友とは違う。彼は睡眠時間三時間でも、全く問題なく仕事をこなしていたが、ガイアにその真似はできそうにない。  凝り固まった首を回すと、何とも心地の悪い音がした。後で誰かに揉んでもらうか、と再び机の上に目を落とすと、──不意に魔方陣が現れた。 「────っ!?」  咄嗟に飛び退く。椅子が倒れ、大きな音が立つ。脊髄反射に近いその行動に、騎士が腰の剣を抜き放った音がした。  魔方陣は、転移魔方陣。それが放つ色に気がついて、ガイアは安堵に肩の力を抜いた。  どっと疲れがこみ上げてくるのは、心臓に悪い行動をとった銀髪の親友のせいだ。  ガイアは身体を緊張させた騎士を手で制した。そのまま机に歩み寄った。 .
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