閑話 その手紙は その一

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   騎士に危ないやら何やらと言われたが、横に首を振って魔方陣を眺める。暫くして魔方陣の上に現れたのは、一通の手紙であった。  魔方陣が消え失せてから、ガイアはそれを手にとった。裏面を見ると、ガイアの名と、親友の今の名が、綺麗な字で書かれている。 「……親友からの手紙だ。全く問題ない」 「し、しかし──」  転移防止結界の張られたこの城に、転移許可もなく強制転移で送られてきた手紙。騎士が怪しむのも無理はない。  だが、この手紙は間違いなくあの親友のものだ。転移魔方陣の色を見ればわかる。 「大丈夫だ」  主人ではないとはいえ、ガイアの立場は第一騎士より遥かに上である。 「……失礼いたしました」  納得のいかない表情をしながらも、騎士は渋々折れた。  椅子に座り、机の中からペーパーナイフを取り出して、蝋で封をされた手紙を開ける。  中から出てきたのは、封筒と同じ真っ白な便箋。二つ折のそれを開くと、彼の綺麗な字が行儀よく並んでいた。 『親愛なるガイア・レントリア・ゼノス王子へ』  ──下部に書かれたガイアの名前に『王子』とつけたのは、ただの悪戯心だろうか。彼のことだ、この手紙はおそらくガイアにしか開けられないようになっていただろう。  つまり、手紙の中身に気を遣う必要はないはずだ。 .
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