閑話 その手紙は その二

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   ユリアス・アクスレイドは、王家の血を引く公爵家の中でも長い歴史と高い地位を持つ五大貴族がアクスレイド家の長女である。  絹のようだと噂される薄緑色の髪に、エメラルドグリーンの瞳の、美姫ともてはやされるユリアス。  しかし、ユリアス自身にとって、今はそれは褒め言葉に聞こえない。全ては、数ヶ月前に出会ってしまった、美しすぎる彼が原因である。 「……会いたいなぁ」  深い蒼の瞳は、澄んだ湖のような色合いで、ユリアスの髪よりも数段は美しい銀の髪は、もはやユニコーンの鬣すら霞む美しさ。  二重瞼の切れ長の目に、長い睫毛。彼が目を伏せると、それは滑らかな白い頬に影を落とし、何ともいえない艶やかさをかもしだす。  綺麗な鼻筋も、程よい厚さの唇も、全てが計算され尽くした──否、あれは計算などでは再現できない、神々しいまでに自然な美しさだ。  自分より遥かに美しい少年は、数ヶ月前に不意に現れて、ユリアスの心を攫ってしまった。  あの瞳の奥に秘められた哀愁の感情すら、彼の美しさを引き立てる材料にしかなっておらず、何をしても絵になる彼には、男女問わず視線を向ける者が多い。  ユリアスが惹かれたのは、無論見た目だけではない。凛とした真っ直ぐな意思や、強さの中の優しさに、強く惹かれたのだ。 .
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