幕間

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   まだ朝日が東の空に顔をだしていない暁と呼ばれる時間。美しい紫の空を眺めながら、リューティスはギルド“虎猫の宴”へと足を進める。  早朝にもかかわらず、ギルドの中は多くの冒険者で賑わっていた。この時間に依頼の手続きをして、朝早くから街を出ていく者は少なくないのだ。  依頼掲示板の前に立ち、これから向からの旅の途中で受けられる依頼を探す。いくつかの依頼書を剥がすと、冒険者が列をなしている受付に並んだ。  さほど時間もかからずリューティスの順番は回ってきて、依頼の手続きを終える。さっさと立ち去ろうとすると、受付の女性に引き止められた。  右腕の袖を握られたリューティスは、冒険者たちの注目の的になってしまった。この後フィーと合流する予定であるため、ここであまり時間をかけたくはないのだが。  なぜか受付の奥に引っ張りこまれ、ソファーに座らせられて待たされる。受付の女性は、忙しい時間だというのに、ギルドマスターのキオレを呼びに行くのだろう、いつもキオレが現れる扉の向こうへと姿を消した。  受付へと繋がる扉の方から、ざわめきが聞こえてくる。何事だと冒険者たちが言い合っているに違いない。できる限り目立ちたくはないのだが、この状況ではもうどうすることもできない。  一分もせず、受付の女性はキオレを連れて戻ってきた。女性はそのまま受付の方へと姿を消す。 「突然スマンのぅ」 「……いえ」  謝罪よりも、この状況を起こした理由を説明してもらいたい。 .
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