十三章 一角獣(ユニコーン)

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   聖蘭が、力強く羽ばたく。純白の翼が、大きく上下する。前方に広がる景色に、リューティスは口元を緩めた。──街だ。  広がるのは、灰色の家々。石造なのだろうか。太い道が、街の中央から放射状に延びている。その数は五。  行き交う人の数が多い。賑わっているようだ。魔界との戦争の難を逃れたのか、明らかに魔法が放たれた跡であるような、纏まって崩れている家は見られない。  聖蘭の背に乗って、今日で三日。休憩をとりつつ街へと向かっているが、疲れ知らずの聖蘭とリューティスに比べ、旅をし始めて間もないのだろうフィーは、リューティスの腹部に腕を回しながら、ぐったりとしていた。 「フィー、街が見えてきたよ」  敬語癖が漸く薄れてきたが、気を抜けば敬語が混じってしまう。会話の度に気をつかうのが、新たな癖となっていた。 「……街?」  一呼吸の間を置いて、フィーは聞き返すように呟いた。そして、腹部に回された手に、力が込められる。 「街だ!」  この分ならば、聖蘭の目的地には午前中に到着できるだろう。となれば、早ければ今日中に街にたどり着ける。  街が見えてから暫くして、聖蘭が降下し始めた。その先は、小さな村の近くの湖だ。澄んだ群青色に群がる小型の動物や魔物がこちらを見上げ、一斉に方々へと駆け出した。 .
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