一章 黄熊と巨大蜘蛛

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   木造の家々が立ち並ぶ小さな村。木でできた簡素な囲いの一部だけ途切れている場所が出入口なのだろう。  そちらへと足を向けると、囲いの中に広がる畑で農作業をしていた若者が一人、こちらに気がついたのか出入口の方へと歩いてきた。 「見たところ商人じゃねぇみてぇだけど、何の用だい?」  訝しげな表情の若者に、リューティスは羽織っていた真っ黒なマントのフードを外した。途端、何故か目を見開いて顔を赤らめる若者。  どうかしたのか、と問いたいが、その前に自己紹介をしなければならないだろう。 「リューティス・イヴァンスと申します。依頼を受けてこちらに参ったのですが……」  “ボックス”と呼ばれる無属性魔法のものを収納するための空間を開いて、その口に手を突っ込んで、依頼書とギルドカードを取り出した。  ──ギルドとは、一般的に冒険者ギルドや討伐ギルドと呼ばれるもののことを指す。  何か困ったことがあったとき、依頼者として依頼をギルドに出すと、冒険を生業とする者やギルドに登録する者が依頼受注者として依頼を受け、達成すればギルドを通して依頼者から依頼受注者へ依頼料の六割が支払われる。  残りの四割はギルドの資金となる。全額の依頼料がもらえないにも関わらず、ギルドを通して依頼のやり取りをするのは、詐欺行為の防止のためだ。  依頼料は依頼内容によって高低があり、また、依頼の難易度によってランク付けがされている。ギルド登録者はそれぞれランクを付けられており、自らのランクに見合わぬものをうけようとすれば、受注時に止められてしまう。 .
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