幕間

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   暗闇に包み込まれた森。夏の夜の虫たちが競うように鳴く。梟の声が響き、蝙蝠の羽音が耳朶に触れる。  木の太い枝に腰を下ろし、幹に身体を預けて、リューティスは一冊の本を開いた。  表紙を開けてすぐに目に飛び込んでくるのは、一枚の写真。  ──鮮やかな紅い髪の少年が、両隣の銀髪の少年と青髪の少年の肩に腕を回し、歯を見せて笑っている。  青髪の少年は鬱陶しそうにしながらも楽しげで、一方、銀髪の少年は何の表情も浮かべていない。その背後に立つ女性は優しく微笑み、女性の隣の青髪の少年と似た男性は、銀髪の少年の頭を撫でている。 「……誠治さん」  男性の名を呟き、写真を一撫ですると、リューティスは一ページ目をめくった。  孤高の月が煌々と地を照らす。柔らかな風が森を撫でる。獣の遠吠えが長く響いた。 .
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