三章 村祭と水神様

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   涼しい空気が心地よく身体を包み込んでいる。夜の虫の音はまだ静まらず、鈴を転がすような音が響いていた。  万が一のことを考えて、身体をすっぽりと包み込むように張っていた結界を解き、くるまっていた毛布を“ボックス”に仕舞い込むと、リューティスは木の枝の上から湿った地面へ飛び降りた。  日の出前の森は、漆黒の闇に包まれていた。東の空は僅かに濃紺から紺へと色を変えている。  水属性魔法で水を作り出したリューティスは手早く顔を洗い、僅かに残っていた眠気を吹き飛ばした。火属性魔法で濡れた顔と手を乾かす。 「“清めの水”」  このあと汗まみれになるのはわかっているが、それでも身体が汗でべたつく感触はあまり好きではない。水属性の清め魔法を唱えると、心地よい冷たさに包まれた直後、嫌な感触が消え去る。  澄んだ空気を、大きく吸い込んだ。その冷たさが、身体に染み込んでいく。  ──リューティスは森の朝が好きだ。  差し込み始めた太陽の光が、霧のかかった森を照らし始め、木の葉に乗った朝露が輝きながら滴り落ちるのが見えた。  リューティスは左手に刀を喚び寄せる。  【白龍】という名のその純白の刀は、十日ほど前に折れてしまったのを、魔力を流し続けることで直したものである。  【白龍】は魔鉱石と呼ばれる石に魔力を流して生成した魔武器であった。本来大破してしまえば石に戻るはずが、そうではないものもある。その括りに入っていたらしいこの刀は、石に戻ることなく形をとどめていたのだ。 .
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