十六章 火竜と赤王蛇

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   斬られても尚、うねり暴れる尾を一瞥し、結界の前で刀を構え直す。残りの六体の赤王蛇が、警戒したようにじりじりと退いた。  ドラゴンに突き刺さった矢が、ついに抜けてしまった。脳を揺さぶられるようなドラゴンの雄叫びに、結界の中から小さな悲鳴か聞こえた。 「──聖蘭」  ユニコーンもペガサスも、聖獣である。争いを好まない彼らであるが、決して弱いわけではない。むしろ、分類的には上級魔物に分類されているのである。  聖蘭は嘶いた。馬のそれとは違い、甲高く澄んだ嘶きが、夜の闇に包まれた森に響き渡る。  それに対抗するように、赤い巨大な蛇が大きくうなり声をあげた。  聖蘭が、リューティスの横から飛び出していった。翼を羽ばたかせ、純白の馬は空へ。  その口元に、光属性の魔力が集まっていく。──ブレス。  白く光輝くその塊は、彼の口から放たれると、赤王蛇の一体に真っ直ぐに飛んでいく。  ドラゴンがこちらに攻撃を仕掛けてくる気配を感じて、刀を振るう。  鋭い赤い前足の爪を、純白の刀で受け止めて、詠唱する。 「森の精は我に従う。太陽と雨の恵みで育まれた深緑(しんりょく)の蔓よ、我が敵を拘束せよ“捕蔓(ほばん)”」  植物属性上級魔法“捕蔓”──。  森だからこそ、安易にできる魔法である。緑豊かな森は、植物属性魔法が使いやすい。 .
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