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人の気配がないことを確かめてから、多少の準備運動をして刀を振り始める。
リューティスは刀を片手で握る。両手で握っていたこともあったが、それはある剣術を習得するためであった。
しかし、もう片方の手で盾を握ることもしない。ならばなぜリューティスは片手で刀を握っているのか。それは、もう片方の手にも──刀を握るためである。
リューティスが使う剣術は、二刀流主体の剣術なのだ。構えも動きも珍しい二刀流主体の剣術に、一刀流剣術と東の国の伝統の舞である刀の舞を交えた、リューティスしか使う者がいない二刀流剣術を、片手一刀のみで使っている。
素振りを繰り返してから、剣術をゆっくりと確かめるように流していく。
──刀を大きく振り下ろしたところで、リューティスはぴたりと動きを止めた。人のものと思われる魔力が一つ、近付いてくるのだ。
暫しの間考えたが、刀の鍛練を見られたところで何か問題があるわけでもない。続行すべく刀を振り上げる。
「──こんなところにいたのか」
聞き覚えのある女性の声に手を止めて目を向ければ、くすんだ金髪の女性がつり上がり気味の目をこちらに向けていた。
昨日のあの女性である。
「おはようごさいます」
「……あぁ」
挨拶を口にすると、女性はリューティスから目をそらした。
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