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だが、見た目ではどちらも同じ魔法にしか見えない。よほど魔力に敏感で、なおかつ空間属性の魔法を知る者しかこの魔法が無属性の“ボックス”ではないことを見抜けないだろう。周りの者たちが気がつくのも、リューティスが死した時だ。
そして、リューティスはこの擬似的“ボックス”に時属性魔法をかけている。つまるところ、この“ボックス”もどきの中は時が止まっているのだ。リューティスが手を入れると、リューティスの手のみ時属性魔法の有効範囲外になるのだが。
──“ボックス”の中からリューティスが取り出そうとしているのは、先日狩った魔物の肉である。
巨大猪──ビッグボーと呼ばれる魔物のその肉は、特有の臭みがあるが美味い。
大きな葉にくるんだ生肉塊を取り出すと、女性が怪訝そうにこちらを見ていた。
「どうかなさいましたか?」
助言については、彼女から何か言ってこない限り、これ以上何かをいうつもりはない。諦め悪くこの場に留まっているのかと思いきや、どうも表情からしてそうではなさそうだ。
「……いや、何をするつもりかと」
「朝食を作るのですよ」
簡潔に答えて、“ボックス”からさらに鍋を取り出す。 水属性魔法で水を作り出し、鍋を満たした。
水属性魔法を飲食に使う者は滅多にいない。それは、魔力をできる限り温存するためであり、魔力量の多いリューティスには関係のないことだ。
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