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「実力があるのでしたら、そうは思いません。その方の実力がわからなければ、心配になると思いますが」
見た目など関係ない。年齢も性別も種族も。実力というのは、持って生まれた才能と努力によって決まるものであり、そこには生きた年月の長さも、男女の違いも、獣人族だのエルフ族だのといった種族の違いも、強さの方向性に関与すれども、全く関係のないことだ。
「……そうか」
女性は諦めたように溜め息を吐き出す。
リューティスは水を捨てて、鍋を“ボックス”に戻した。探されているのならば、いつまでもここにいるわけにはいかない。
「村長さんの家に行けばいいのですか?」
「あぁ」
多少面倒であるが、彼らの厚意を無下にするわけにはいかぬのだ。
リューティスが村へと歩き出すと、彼女も後ろをついてくる。向かう方向が同じなのだから当たり前であるが。
森から出ると、朝から賑わう村の姿が見えた。行き交う人々がこちらを見て、慌てたように近づいてくる。
「探したよ……」
「どこにいたんだい」
「村長が待ってるよ」
総出でというのは、誇張でも何でもなく、本当だったらしい。
「……すみません」
騒がせてしまった。以前旅をしていた時は、魔法で身長やら声やらを誤魔化していたせいで、こうして旅先で子供扱いをされることにどうも慣れない。
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