三章 村祭と水神様

9/15
前へ
/1502ページ
次へ
  「実力があるのでしたら、そうは思いません。その方の実力がわからなければ、心配になると思いますが」  見た目など関係ない。年齢も性別も種族も。実力というのは、持って生まれた才能と努力によって決まるものであり、そこには生きた年月の長さも、男女の違いも、獣人族だのエルフ族だのといった種族の違いも、強さの方向性に関与すれども、全く関係のないことだ。 「……そうか」  女性は諦めたように溜め息を吐き出す。  リューティスは水を捨てて、鍋を“ボックス”に戻した。探されているのならば、いつまでもここにいるわけにはいかない。 「村長さんの家に行けばいいのですか?」 「あぁ」  多少面倒であるが、彼らの厚意を無下にするわけにはいかぬのだ。  リューティスが村へと歩き出すと、彼女も後ろをついてくる。向かう方向が同じなのだから当たり前であるが。  森から出ると、朝から賑わう村の姿が見えた。行き交う人々がこちらを見て、慌てたように近づいてくる。 「探したよ……」 「どこにいたんだい」 「村長が待ってるよ」  総出でというのは、誇張でも何でもなく、本当だったらしい。 「……すみません」  騒がせてしまった。以前旅をしていた時は、魔法で身長やら声やらを誤魔化していたせいで、こうして旅先で子供扱いをされることにどうも慣れない。 .
/1502ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48845人が本棚に入れています
本棚に追加