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朝から彼らに無駄手間をかけさせてしまったことに罪悪感を覚え、目を伏せる。
「あ、いや、いい、気にするな」
頭を乱暴に撫でられて、驚いて顔を上げれば、がたいの良い中年の男が、困ったように笑っていた。
「餓鬼なんだから餓鬼らしく口先だけで謝っとけ。こっちの心情まで理解する必要はない」
子供らしからぬ、と思われたのか。リューティスは心中で苦笑する。リューティスは、大人に囲まれて、大人と同じ扱いをされて育ったのだ。今さら子供に戻るのは難しい。
曖昧に笑んで誤魔化したリューティスは、村長の家へと連れていかれた。
「あぁ、無事だったか」
村人の一人がドアを叩くと直ぐに村長が中から顔を出した。安堵に表情を緩めた彼に、リューティスは眉尻を下げた。
サンダーベアを倒したリューティスが、ここらにいる魔物に負けるわけがないということは、彼らにもわかっているはずである。
昨日はリューティスのランクを知ってサンダーベアを討伐に行くのを見送ってくれたにも関わらず、なぜこんなに心配されるのか。
「……ちょっと話があるからね。朝食も用意してあるから入って」
──昨夜の、あの気配か。
気のせいかと思ったが、そうではなかったらしい。素知らぬふりをして頷き、リューティスは村長の家へと足を踏み入れた。
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