三章 村祭と水神様

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  「──魔人でも出ましたか」  リューティスが小さく呟くと、前を歩く村長の肩が大きく揺れた。動揺したのだろう。 (やはり、……ですか)  魔人──人型魔物。黒い鮫肌のような肌と血色の瞳を持つ人型の魔物の通称である。  獣型魔物──魔獣や、植物型魔物──魔草、それから魔人を総称して魔物というが、魔物とは通常、魔獣のことを指す。  連れていかれた先は、昨日と同じ突き当たりの部屋。今日も太陽の光が差し込んでいるが、雲が多いためか時折陰る。  ソファーの前の正方形の机には、質素であるが美味しそうな朝食が、二人分並べられていた。  村長と向き合うようにソファーに座ると、沈黙が漂う。村長の表情は強張っていた。 「……魔人が出たのですね? ランクはわかりますか」  魔人には、魔獣と同じく級付けがされている。下から順に下級生、中級、上級者、最上級だ。しかしながら、魔人と魔獣のランクが同等というわけではない。  中級上位のサンダーベア一体の討伐がかろうじてB──サンダーベアよりも幾分か強い魔物であると一体の討伐はAランク依頼になる──であるのに対し、中級魔人一体の討伐は全てAランク依頼に相当する。 .
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