三章 村祭と水神様

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  「治癒魔法を!? わかったよ、直ぐに馬を用意する」 「いえ、転移魔法が使えますから問題ありません」  村長の表情が固まった。リューティスが転移魔法を使えるということが、そんなに意外だったのだろうか。 「て、転移魔法って……。わ、わかった。報酬の方はどうすれば……?」 「魔界軍残党の魔人討伐は国からの依頼として、既に全ギルドで貼り出されています。報酬も国から出ますので、お気になさらず」  無論、危害を加えてくる魔人に対してのみ、この討伐依頼が出されている。投降した魔人は、定期的に魔界から送られてくることになっている使者に、身柄を渡されることになるだろう。  その先に待っているのが、生か死かはわからぬが。 「朝食、本当はいただきたかったのですが、時間がありませんので」 「あぁ、気にしないでいいよ。……せめてパンだけでも持っていって」  リューティスがソファーから立ち上がると、村長も立ち上がった。その言葉に甘えて、胡桃入りのライ麦パンを二つ、手に取る。 「ありがとうございます。……祭りに参加したかったのですが、もしかしたら無理かもしれません」 「そしたらまた来年来ればいいさ。歓迎するよ」  冗談めかして祭りのことを口にすれば、村長は肩を竦めて小さく笑った。楽しみにしていた蜂蜜も、結局口にしていない。 .
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