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倒壊した家屋。その隙間から覗くのは、傷だらけの脚。千切れた何かは、人形のそれのように、動くことはなく、黒く斑に染め上げられた地面に転がっていた。
何人かの男たちが、倒れた家から、人を救い出す姿が見えた。汗をにじませ、唇をきつく結び、ひたすらに木片を退かす彼らは、こちらには気がつかない。
濃厚な血の臭いが充満している。微かに誰かが泣く声が聞こえる。広場のような開けた場所に、敷物を敷いて座り込む人々の姿を見つけて、リューティスは足を止めた。
俯き、小さな声で話し合う村人たち。その大半が女子供で、後は老人と傷だらけの者ばかり。リューティスに気がつく様子はない。
呻き声をあげる血だらけの者が、二十人ほど並べて寝かされている。無事そうに見える者の人数の方が、明らかに少なかった。
「──あの」
リューティスが声を出すと、話し合っていた村人たちが、一斉にこちらを振り返った。
見開かれた目。しかし、直後に眉をひそめられる。こんな時に何の用だとでも言いたげに、顔を歪められた。
「こちらの村の様子を聞いて参りましたリューティス・イヴァンスと申します。怪我人の治療をさせてください」
“ボックス”から取り出したギルドカードを、幼い子供を抱えた女性に差し出すと、それに視線を落とした女性の目が極限まで見開かれた。
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