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「リューティス」
一人乾物とパンで済ませようとしていたリューティスの元に、手を貸してくれたうちの金髪の男性がは二人分の食事を手にして歩み寄ってきた。
「ほら、お前の分だ」
「……よろしいのですか?」
自分の分があるとは思っていなかった。目をしばたたかせると、男性は苦笑する。
「一番の功労者が何を言う」
スープと香草焼き、それから小さなパンが二つ載せられた盆を押し付けられて、小さく笑んだ。
「……ありがとうございます」
「ほら、こっちに来い」
男たちが集まる大きな石がいくつも並べられた場所へと連れていかれて、なぜかその中央に座らされた。
「全員注目!」
何事だと言うようにこっちを一斉に向いた男たち。リューティスが困惑して眉尻を下げると、その視線は隣に立つ金髪の男性に向けられた。
「冒険者のリューティスだ。この飯の肉の提供者である」
がしがしと頭を乱暴に撫でられて、リューティスは手の持ち主を見上げた。金髪の男性はニイと笑む。
「……あぁ! 救助作業手伝ってくれた奴か。悪いな、手元に集中していて顔まで見てなかった」
「美味いな、この肉。ありがとよ」
「猪肉なんて久々に食ったぜ」
向けられた笑顔に、胸が温かくなる。感謝をされるというのは、嬉しいことだ。
「……リューティス・イヴァンスです。今日中に全員の救出が終えられて一安心ですが、まだ建物がほぼ全て壊れたままですので、明日も微力ながら手をお貸しします。よろしくお願いします」
小さく頭を下げれば拍手が起こり、驚いて顔をあげると金髪の男性に再び頭を撫でられた。
「ニース・ライアンだ。よろしくな」
目尻にしわが寄る。頬に小さなえくぼができていた。ひげ面の顔に浮かんだ愛嬌のある笑顔に、リューティスはふわりと笑んだ。
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