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「まあいい、走れ! 試験だ!!」
男の言葉に、リューティスは予想が的中していたのだと理解した。
黙って走り出す。身体強化はせずに、訓練部屋の壁際を走る。なかなか広い訓練部屋であるが、十周、二十周と走っても、リューティスの体力は尽きることなく、呼吸を乱すこともせず、ひたすらに走り続ける。
ただ走るだけでは、いつまで経っても終わりそうにない。男のことだ、リューティスが倒れるまで走らせるだろう。
リューティスはペースを上げた。旅に出てからは毎日はできていないが、それまでは欠かすことなく毎日続けてきた長距離を走る鍛練時のペースだ。
これに付け加え、砂袋を腰にくくりつけて走っていた時もあったのだが。
息が上がり始める。やはりこの速さが一番だ。心拍が上昇し、心地よい疲労感を感じ始める。
しかし、それにしても喉が痛い。呼吸は苦しくないにも関わらず、口で息を吐き出そうとすると、喉が嫌な音をたてた。
後でのど飴でも作ろうかと考えながら、頭の隅で走った周数を数えていく。
流行り病──アーヴァンの治療薬も作っておかねばならない。宿屋に帰ったら、夜遅くまで薬の調合だ。
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