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百周を超えた辺りで、流石のリューティスも辛くなってきた。基本的にリューティスは、速さで戦う剣士だ。体力勝負や腕力勝負の戦士ではない。
しかしながらリューティスは、速さに特化した風や雷や光属性ではなく、氷属性が得意だ。速さ特化の属性が使えないわけでも、苦手なわけでもない。むしろ、ギルドカード上では使えると記されている火属性よりも遥かに得意である。
だが、それを滅多に使わないのは、リューティスにとってそれが奥の手だからだ。今の速さが限界であると信じ込ませ、いざという時のみ使用する属性、それが風属性と雷属性である。
それはともかくとして、リューティスは別段、力に特化しているわけではない。
仕事上の問題で、体力がなければどうしようもなかったが故に、自然とついただけである。
しかし、リューティスにもなけなしの自尊心があった。意地で走り続けた百五十周目。リューティスが音をあげる前に、制止の声がかかった。
走るのを止めて、ゆっくりと歩き始める。壁沿いを歩きながら、息を整え、心拍を落ち着かせる。
心地よい疲労に身体中の筋肉を脱力させながら、足を止めることなく、一周したところで男のもとへと駆け寄った。
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