優しい嘘

31/37
前へ
/2475ページ
次へ
『それなら拓人さんが彼氏になれば良い』と景紀が言うと 「悪いな、俺はもう結婚してる」 「は?」 「あ、相手は男だけどな」 「へ?」 「お前驚きすぎだろ」 驚くもなにも、と景紀は複雑な心境になりながら、どう返事をすれば良いのか頭をフル回転させるが、何も良い言葉が浮かんでこない。 「俺は今の嫁な、男だけど。あいつと出逢う前に朝陽に出逢ってたら迷わず朝陽を選んだ」 「はあ…」 「それくらい良い女だって事だよ。ここがな、優しく出来てる」 拓人はそう言って自分の左胸をポンポンと叩いた。 『痛みをよく知ってるから人一倍優しいんだよ』と言いながら。
/2475ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21414人が本棚に入れています
本棚に追加