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「それで結構ダメになる事ばっかりだったから」
「束縛する?」
「出来る事なら」
「良いじゃん、仕事に支障のない程度なら束縛しろよ。それだけ本気だって事だろ」
「え…」
初めて言われた言葉に戸惑ってしまう。
グラスに口をつけて大きく深呼吸して、今の言葉を反芻してみる。
「束縛って言ってもな、方法はいくらでもあるだろ?」
「方法ですか?」
「例えば”今日の夕飯はハンバーグだよ”とメールする。ハンバーグが好きな彼女なら仕事が終われば急いで帰って来るだろうし、デザート買ってきてる、って言えば喜んで帰ってくる。束縛の方法を変えれば束縛に感じない事だってあるだろうが」
「それは…考えた事なかったです」
「のほほんと好きだ好きだって言ってるだけじゃなくて頭使えよ」
にんまり微笑む拓人を見ながら『奥さんにそういう事してるんですか?』と聞くと『俺がされてるんだよ』と拓人が笑う。
景紀は何となく今までの自分が馬鹿らしく感じてきてしまった。
束縛の形を変えるだけで表面上だけでもごまかせる、そんな事は考えた事もなかったし、誰も言う人はいなかった。
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