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そう言われても、と言いながらふと朝陽を傷つけたと思った時の事が甦る。
そしてこの拓人の匂いをさせてきた時の自分の感情。
あの一瞬の胸の痛みが何だったのか。
少し考えてから景紀は拓人に
「分かりました、しばらく同居してみます。ただ一つお願いが」
「何?」
「その間、その、そういう関係は…」
「何もしないよ。誘われたら景紀に連絡するから連絡先交換しておこう」
この仕組まれたような出来事に流されて良いのか迷いもする。
ただ、朝陽と一緒にいるのは嫌いじゃないし、むしろ楽しい。
真由とは真逆の朝陽は拓人の言う通り、人の痛みが分かる優しい女性だとも思う。
いつも笑っているのは多分寂しいからだろう。
そして何より今は朝陽への興味が湧いている。
「のせられてみます」
「上手くいく方に賭けてやるよ」
「ダメだったら?」
「その時は部屋探し手伝うさ」
拓人が笑いながらグラスを空にし、景紀も同じようにグラスを空にした。
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