優しい嘘

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「で、俺からの質問」 「ん?」 「山口課長の事知ってるの?」 「確定申告とかでよくお世話になってるから」 なるほどね、と景紀は納得し『じゃ、俺の事も知ってた?』と真面目な顔で聞かれた。 「いつも真面目に仕事してるのは知ってた」 「何で知らないふりしたの?」 「嫌だろうと思って」 掃除機を止めて片付けながら、景紀は少し複雑な心境になってしまう。 職業柄、自分が知らないか覚えていないだけで、税務署に来る人はたくさんいる。 相手は自分の事を知っていたり覚えていて戸惑う事もあるのに、この朝陽だけは一度見れば忘れる筈がない。
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