優しい嘘

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その声と同時に景紀が入って来て『ワインの片付けだけで汗かくとはね』と言い、シャツを脱いだ。 そこには無駄な脂肪のない引き締まった体があり、朝陽は思わず目を背けてしまった。『ごゆっくり』と言いながらドアを閉めると体の力が抜けてしまう。 まさか着痩せするタイプだとも思わず、初めて景紀を異性として意識してしまった自分に焦り、冷蔵庫から水を取り出してグラスに注ぐ。 筋トレでもしているんだろうか、と思いながら一気に水を飲み干して顔の火照りを何とかおさめる。レトリバーに見えたのにドーベルマンだった、という感じだろうか。 それでも、と朝陽はふと思う。体つきはドーベルマンかもしれないけど、やっぱり顔や中身はレトリバーだと。いかにも草食系で、淡白そうだ、と一人で笑っていると 「何かあった?」 「へ?う、ううん、何もないよ?」 「何か拾い食いしたんじゃない?」 「な、なんで私が拾い食いするのよ」 「すぐ餌付けされそうだしさ」
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