優しい嘘

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朝陽にごり押しされて箱を開け、新品の靴を取り出しておそるおそる足を入れるとサイズがちょうど良い。 そして良い靴というのがこんなに履き心地が良いとは知らなかった。 靴なんてどれも同じようなものだと思っていたから。 「あ、ありがとう…」 「どういたしまして。明日からそれ履いて頑張ってね」 「何かお礼しないと。朝陽さんは何か欲しい物はないの?」 「ない」 呆気なく一言で片付けられ、朝陽は時代劇のテーマソングを鼻歌まじりにニコニコしている。 似合って良かった、と言いながら満足げに景紀の足もとを見て『本当に欲しい物なんて手に入らないんだよ』と呟いた。
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