優しい嘘

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以前朝陽が掃除を手伝ったせいで、返って散らかってしまったという痛い出来事があるため、社員一同が朝陽には何もしなくて良いと言って甘やかす。 実際掃除なんてしてくれなくて良い、と皆思っている。いつでも社員優先に考えてくれ、仕事さえ終わっていれば年間で何日休んでもきちんと一ヶ月分の給料が出る。そして社員の尻拭いですら嫌な顔も文句も口にせず、率先して頭を下げてくれる。 年に一度は慰安旅行に行き、余裕のある時は社員の家族も参加するような旅行を企画してくれ、自分達の事を気遣ってくれる優しいこの社長が皆好きでこの事務所に腰を落ち着けた。 多少変なところはあるものの、この事務所は固い結束力で仕事をこなし、今では業界でもそれなりに名が通っている。 「皆無理ない程度にねー」 「はーい」 朝陽は暢気にチュッパチャップスを口に入れてご機嫌になっている。 一日でも早く事務所を休みに入れられれば、その分正月休みを長くとってやれる事になるし、こういう時こそ皆にゆっくり休んでもらって家族と上手くやって欲しい。 皆が奥さんであろう人にメールしている姿が見え、朝陽は微笑ましく思いながらソファでゴロゴロして過ごす。
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