陽が昇る

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少し遡ったお話 西池 佑介 『やっぱバラって花の王様やんな』 開店前の店に立ち寄った椿君と雑談してる最中、俺が手入れしとるバラの束を見てポツリとつぶやいた。 『隆?』 『うん』 『俺、今まで花を贈るって行為が不毛やと思っててん』 『何で?』 『形に残らんし』 『でも心に残るやろ?』 『ただボケッと毎週もろて、萎れて行くの見るの切なくなんねん』 『気にしとるんや』 『だからこの間な、どらいふらわーにする事思いついてん! 萎れかけてた頃にエアコンつけっぱなしで寝てもうたら朝にはパリッとなっててん!』 『椿君それ枯れたんやで。』 『…あれ枯れたんか。』 暫し無言が続いた後思い付いた。 『椿君「枯れない花」って知ってる?』 きょとんとする椿君に話を続ける。 『プリザーブドフラワー言うてな、俺今それの勉強中やねん。 隔週で講習受けに行ってんねんけど、生花使うし勉強中の身やのに金ばっかりかかんねん』 そこまで話すと何となくわかったらしい。 『…んで。もし椿君が良ければだけど、俺がその隆の花を枯れないように魔法かけたろか。 まだ見習い魔法使いやけど。』 気取ってウィンク付きで提案すると椿君は小さく頷いた。
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