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大隈 行成
閉店後、暗くなった商店街を走る。
ペットショップはもうcloseの札が出ていた。
なら家まで届けに、と踵を返すと向かいの自販機の前で立ち尽くす背中が見えた。
財布無いのに今の今まで気付かなかったんか。
そんなとぼけてるとこも好きやで。
ゆっくり歩み寄って半ば抱き抱えるような格好で後ろから100円玉を2枚入れた。
驚いて見上げる祥ちゃんが訳のわからんこと言い出す。
思い出した?
思い出すも何も忘れる訳ない。
イチゴ好きの祥ちゃんの為にバースデーケーキを作った日からもう一年たつものの忘れる訳あらへん。
「覚えとるよ?」
「…どこから?」
「そんなん…初めて会った日から…イチゴが好きでかわいらしいもん好きで、そうやろ?」
祥ちゃんの望む言葉じゃないらしく、必死に脳をフル回転させる。
俺は何を忘れてる?
「甘いものも好き、やで?」
「うん」
「キレイなもんも」
「うん…」
祥ちゃんの言いたいことがわからんからただ頷く。
「ユキお菓子作り上手やんね」
「……」
「『ケーキ』うまかったで?」
「……」
突然変わった話に心臓が脈打つ。
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