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高3の7月の話。
夏休みに入ったその日から始まった夏期講習の帰り道、いつもと違う道から帰ってみようと何の気なしに思った。
せっかくの高校生活最後の夏休みだって言うのに勉強勉強。
学校の授業とこれじゃ変わらない。
せめて気分を変えて少しでも休みを満喫するフリがしたかった。
初めて通る少し離れた小さな商店街の外れに他の建物に紛れてキレイな店構え。
レンガ造りのそれは周囲の古びた建物より遥かに新しく、でも不思議と色合いがその町に馴染んでいた。
ドアの横にはカラフルなマカロンタワー。
「わぁ、キレイやぁ。
これホンモノやろか。」
腰を屈めてガラス越しのそれに顔を近づける。
店名のロゴ入りのガラスはうまいこと目隠しになっとったけど、屈んだ事で店内がよく見えた。
ケーキ屋さんかと思われるそこはケーキ以外のカラフルなマカロンや宝石のようなチョコレートや焼き菓子で埋め尽くされていた。
あまりのきらびやかさに息を飲む。
美味しそう!キレイ!
…でも当然高そうや。
学生の自分が普段コンビニで買うようなお菓子とは違う。
ええなぁ。
やっかし佑介に誘われた海の家のバイトのクチ、断らへんかったら良かった。
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