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祥
やっと待ちに待ったこの日。
今更バイトを探すような余裕も時間もなかったから、家の手伝いする!言うていつもよりお小遣いを上乗せしてもらう約束をオカンに取り付けた俺は自分でもよう頑張ったと思う。
いつもより多い千円札に満足して明日こそあの店に行こうと決めた。
次の日は講習が休み。
初めて私服で昼前からあの店に向かった。(祐介には海に来んのかー?て言われたけど)
「あれ、早く来すぎたかな」
店の前ではいつもの背の高いお兄さんが掃除の最中。
まだ開店前らしい。
張り切って早く来すぎたことにちょっと恥ずかしく思っとると俺の視線に気付いたその人が顔を上げて手を止めた。
お兄さんは「今日も来てくれたんやね」と口を大きく横に広げてニッコリ笑った。
恥ずかしかった。
毎日外から覗いてたのがバレてたなんて。
こっそり見とったハズやのに。
昼間の明るい太陽の下から店内を覗いてたんやから向こうからは丸見えだったらしい。
恥ずかしくて死ぬるわ…。
真っ赤になりながら初めて踏み入れた店内は甘い匂いが立ち込めて、キラキラ輝くケーキやカラフルなお菓子の色の洪水に呑み込まれ暫し幸せでボーゼンとした。
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