260人が本棚に入れています
本棚に追加
夏休み中、時折その店に通った。
毎日行ける訳やないけど毎回一個ずつお菓子を買った。
いつも混雑しとる店内ではお兄さんと喋れる事はあまりなかったけど、俺を見かけるとニッコリ笑ってくれた。
愛とか恋とか全然そんなんちゃうけどいつしか自然に憧れた。
程なくして夏休みは終わる。
学校が始まれば当然あの店にもなかなか行けなくなった。
自分の誕生日にあそこのケーキが食べたいと親に頼んで買いに行った時、あのお兄さんはもういなかった。
その後数回お店を訪れたけどやっぱりいなかった。
彼も夏休み中のみのバイトだったらしい。
そして俺もお菓子ばっかり買うてる訳にはいかなくなった。
進学先を専門学校に決めて暇になった俺は友達と始めたバンドが楽しくて、いつまでも借り物のギターやなくて自分のギターやアンプが欲しくなりお金が必要になったから。
季節は巡り、進学に伴い俺は自宅を出る。
就職をし、何かを忘れては何かを吸収し、自分の中の細胞も何もかも入れ替わって、楽しく毎日過ごしていた時、職場のある商店街で慎ちゃんが背の高い男の人を連れて空き店舗になっていたパン屋さんの前におるのを見た。
その後ろ姿に見覚えがあった。
最初のコメントを投稿しよう!