260人が本棚に入れています
本棚に追加
顔も確認せずに島やんの店に走る。
何でその場から逃げたのか今でもわからん。
ただ確信だけがあった。
粟立つ肌をさすりながら息をあげて島やんの店に飛び込んだ。
「どうした?」
俺の姿を見て何かを察した島やんは心なしか優しい。
「マカロンのお兄さんがおった。」
「あの店の?」
意外にも食後にスイーツを求めるような島やんにだけ、思い出話のように何度か聞かせていたあの店のこと。
"ケーキがキラキラしててな"
"マカロンがオモチャみたいでかわいいねん"
"背の高い優しいお兄さんがおってん"
「声、何でかけられんかったんやろ…」
「確かめてみればええやん」
「何を?」
「…色々」
色々、とイミシンに言うた島やんの真意はわからんかったけど、とにかく普通に声をかけることはできなかった。
憧れてはいたけど、別に恋心を抱いてた訳やなし。
ましてやあんな10年以上も昔の事。
「声かけて友達になればええやろ。
慎二とおったんならそこで何かやる気なんやろし。」
「友達…」
「友達でも何でも」
「向こうが俺の事覚えとるかわからんし」
「じゃあ出合いからやり直せ」
最初のコメントを投稿しよう!