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今思えば島やんはその時既に何か先を見据えていたんやと思う。
そうやん。
普通に声かければええねん。
あの店のお兄さんですよね、って。
昔何回か行ったんですよ、って。
別に人見知りするタイプやないって自負しとる。
何を躊躇しとるんかわからん。
何を確かめたいのかもわからん。
そこでニヤッと笑った島やんに首を傾げる。
「絶対変に思われるて!」
「いやー大丈夫大丈夫。想像以上や。」
「向こうにバレなくても商店街の人にバレるて!」
「化粧でもするか…」
「お化粧なんてしらんよ!」
恐ろしい事に店の商品であるデッドストックのワンピースなんて着せられて。
確かに普段レディースも着るけども。
こんながっつり乙女な服なんて着たことあらへん。
キャーキャー言うてるうちに向かいの美容室に叩き込まれた。
罰ゲームやとか何とか言われた美容師のお兄さんはやけに乗り気で俺にメイクを施した後にウィッグまでかぶせた。
「どっから見てもパッと見、女子やな。」
「パッと見やろ、よう見たらバレるて!」
「よし、これでちょっと佑介んとこ行ってこい。」
「聞いとる!?」
「佑介にはバレてもええやろ。
俺にやらされた言えば。オラ行け!」
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