男三十から。

2/7
前へ
/166ページ
次へ
大隈 行成 そう言えば栄斗町8丁目商店街はあの叔父さんの店の商店街に似とる。 だからこそ興味本意で踏み入れてあの空き店舗を見つけたんや。 俺のルーツ。 そこから祥ちゃんが絡んでいたなんて、何で忘れてたんやろ。 思い出した。 思い出した!全て。 あの日のくしゃっとした笑顔。 顔も忘れてしまったと思ってた。 でも今目の前におる祥ちゃんの顔、間違いない。 あの年のあの夏に出会ったかわいい少年の姿とかちりと重なった。 胸がいっぱいで声が出てこない。 なのに。 「子供やと思うとった…」 ようやく出てきたのはそんな気の利かない台詞。 「俺やってユキの事、大学生位かと思っとった。 子供扱いされとったしぃ。」 そう言うてちょっぴり膨れた。 でも次の瞬間には柔らかな笑顔になる。 「俺が先に『見つけた』んやで。ユキの事。」 考えるより先に体が動いた。 手が祥ちゃんの頭を引き寄せ、笑みをたたえる祥ちゃんに唇を重ねていた。
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

260人が本棚に入れています
本棚に追加