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飛鳥は約十分程で 客間に戻って来た。
「悪い、待たせたな」
隣り合わせで座っている慎也と瑞稀の反対側に腰を下ろす。
「澪梨は?」
「ああ、目立った外傷はない。噛まれた場所も、傷には ならなかったようだ」
「良かった……」
一安心するも、瑞稀は自分が巻き込んでしまったのでは という思いで心を痛めていた。
自分が澪梨と親しくしなければ、出会うことのなかった危険に晒された。
飛鳥に対しても、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「……瑞稀、気遣いは無用だ。多分 アイツは、俺と澪梨が兄妹だという事も知っていたと思う」
「なぜ、そう思いますか?」
「“澪梨を離したくない”と あの……ヒカリが言った時、確かにこちらを見ていたんだ」
飛鳥は目が合った時のヒカリの表情を思い出していた。とても不快なノイズが入るような、耳鳴りがするような感覚。
子供の姿に似つかわしくない ただならぬ雰囲気を纏っていた。
「お前たちは、ヒカリがどういう奴か 知っているのか?」
「……俺が知る限りの事を話します。少し長くなるかも知れませんが」
真っ直ぐに飛鳥を見て、瑞稀は深呼吸した。
隣に慎也がいてくれて良かった、と思いながら。
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