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2人は客間に通され、飛鳥は部屋まで澪梨を運んで行った。
この広い家には誰も居ないようだった。
シンと静まり返った家の中で、時折 風の寂しい音が聞こえてくる。
WG団員には、小部屋が割り当てられて、そこで寝泊まりする者も多くいる。
飛鳥がどうかは 今分からないが、もし彼もそうだとしたら、澪梨はこのだだっ広い家で一人で過ごしていたのだろうか。
深入りはしないつもりだったが、そう思わずにはいられなかった。
「……それより瑞稀、どこまで話すつもりだ?」
「そうだな……」
飛鳥は信用出来る。
そう感じていた。
澪梨に口止めして、他人のフリも出来た筈だ。それを、姿を明かして 実家に案内し、澪梨と兄妹ということまで瑞稀と慎也に打ち明けた。
基本的には正体を明かすことのない団員同士のなかで、それは特別なことだった。
「あまり時間は取らせたくないから、ざっくりとだけど……全て話すよ。飛鳥さんの意見も聞きたい」
「そうか」
慎也は少しばかり不安だったが、瑞稀の横顔は凛としていた。
この男に振り回されてやろうと決意したのだ。
飛鳥さえも巻き込んで、この目で見極めたい。そう慎也は感じた。
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