4890人が本棚に入れています
本棚に追加
/580ページ
**
ふわふわと浮いているような気分だった。
終わりのない星空の中にいるような、地面に足が付かない感覚。
それはとても不安な気持ちになる状況だった。
「兄さん……?」
呟いた一言は、響くことなく下へ落ちていく。
澪梨は久し振りに夢を見ているのだと思った。
目を覚ます一歩手前の、頭がぼんやりした状態で澪梨は考えていた。
(兄さんの気配を感じて、西公園に……)
西公園での光のパフォーマンス。色とりどりのライトに照らされるレインコートの子供。
(兄さんと、瑞稀と慎也。何故一緒に? 僕はそこへたどり着いた……)
段々と覚醒していく脳が、何かを思い出した。
身体が震える。目を開けたくなかった。
現実を見るのが怖くなったのだ。
まだ夢の中にいた方がマシだ。一人でいる方が、何も知らない時の自分の方が……。
「澪梨、大丈夫だ」
その時、誰かの手が澪梨の手を握る。
それはよく知った体温だった。
「……兄さん」
「怖い思いをさせたな。身体は平気か?」
ゆっくり目を開けて 見えた飛鳥の顔を、なんだか懐かしく感じてしまう。
澪梨は飛鳥の無表情が、それでも微笑んでいるつもりなのを知っていた。
最初のコメントを投稿しよう!