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光『たくっ!心配し過ぎだ…』
体育館に向かって足を進める。
俺は女である自分が嫌いだ。
だから女らしい格好、振る舞いができない。
父は女である俺を認めなかった。
どうしても父に自分の存在を認めて欲しくて、与えられる課題をただひたすら頑張った。
母はそんな俺を知り、女らしくさせようとあらゆる作法を仕込んだ。
苦しかった。
女である事を肯定させようとする母。
けれど自分は女である事を拒否し男らしくなりたい。
ただ父に認められたい。
そんな苦しさから逃れられる逃げ道が出来た。
この高校入学だ。
この高校に合格したら認めてやってもいいと、父は言った。
全寮制で入寮してしまえば、母から逃れられる。
だから、俺は死ぬ気で課題に取り組んだ。
結果は合格。
父からは、
『お前にしては上出来だ』
そんな言葉が返ってきた。
初めて肯定された気がした。
自分の存在を受け入れられた気がした。
この三年間は何の監視もない。
自由にしていいと言われた。
母の手も届かない。
やっと手に入れた自由だ。
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