ワンサイド・ゲーム

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東京都新宿区・明治神宮野球場。 一塁側・CTR横浜熱球倶楽部ベンチ。 このチームの投手コーチを勤める俺は、さっきからため息ばかりついていた。 理由は、これを見て貰えばわかるだろう。 E 302 01  | 6 C 000 01  | 1 神宮球場のスコアボードは、何度見直してもお寒いスコアと、来年あたり世話になりそうな求人情報誌の広告を、飽きもせずに掲げている。 6対1。 チーム随一のスラッガー・福嶋のソロでどうにか一点返したとはいえ、差は5点。 今大会の規定では、7回時点で7点差がついているとコールドゲームが成立する。 つまりあれだ。 まだ5回だというのに、勝利の女神とかいう糞ビッチはENESSAといちゃつきまくり、そのまま股を開きかねない勢い、ってわけだ。 「何辛気臭い顔してんだ? 深山(みやま)?」 チームのコンディショニング・コーチで、俺の悪友でもある新浦(にうら)が、俺に話かけてきた。 「どうもこうもねぇよ……先発のカナは5回6失点。自慢のはずの打撃陣は福嶋のホームランが出るまでアズナブルの野郎にパーフェクトに抑えられてたとあっちゃあ、なぁ」 そう言って俺はまたため息をつく。
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