プロローグ――群雄たち

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すると伊勢監督は、 「へん! ド阿呆をド阿呆と言って何が悪い!? それに“恋”だと? ヤったこともないガキんちょが何言ってやがる!」 と言って、馬鹿にしたように鼻を鳴らす。 すると成田は、 「ひっどーい! それ完っ全にセクハラですよ監督! いくらアタシが神奈川社会人球界を代表する超絶美少女選手だからって……」 などと残念なことを口走り―― 「だからド阿呆って言われんだよお前は!」 と、伊勢監督に言葉を遮られる。 そして、 「誰が“神奈川を代表する美少女選手”だって? もしお前がそう呼ばれたいのなら――」 そう言って今度は伊勢監督が成田を引っ張り、ミーティング室へ連れて行く。 「痛い痛い痛い! アタシは監督と違って繊細な乙女なんですからもっと優しく!」 しかし伊勢監督は聞く耳持たず、ミーティング室のTVの前へ彼女をほうり出す。 画面には、神宮球場のグラウンドが映し出されている。 そして。 画面はマウンド上の、CTR横浜熱球倶楽部の先発投手のアップに切り替わる。 「――あ、あいつがなんで……ENESSA相手に、先発なんかやってんすか!!」 成田が、画面に向かって素っ頓狂な声で叫ぶ。 画面では、見目麗しい童顔の美少女――しかも巨乳――が、楽しげな笑みを浮かべていた。 伊勢監督は、画面上の美少女と成田をそれぞれ一瞥すると、ニヤリと笑いながら言った。 「――CTRの御園生 香苗(みそのお かなえ)。奴のウィニングショット――“懸河(けんが)のドロップ”を打ち砕いてみろ! ――6月のハマスタで、な」
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